あたし谷田亜樹18歳、高3。 あたしにはくされ縁に近い友達がいる。 楢崎伸哉。 高1の時、すごく自然に普通に出会った。 同じクラスになって、席も隣。 それがきっかけで、よく話すようになった。 今は、朝の7時30分。 早く学校に着きすぎたあたしは、窓側でグラウンドを見ながら考えていた。 あたしも高3、世間一般的には受験生なのだ。 けど、この高校には、敷地内に付属の大学が付いている。 だから、特に何もしなければエスカレーターで入れる。 あたしはこれから先、何の保障もないのに、 これからもずっと伸哉と一緒だと思っていた・・・。 そんなとき、『ガラッ』とドアが開いた。 ・・・振り向くと伸哉がいた。 伸哉「お?亜樹早ぇなー。」 亜樹「あ、おはよー。んー・・・早く来すぎちゃった。」 伸哉「そー。俺は久しぶりに朝練顔出してみようと思ってさー・・・。」 伸哉が話してる言葉をうつろに聞きながら、 あたしは、思わず見つめていた。 伸哉「亜樹?どうした?何か俺、変?」 亜樹「え、あー…違う。」 伸哉「お前こそ変?」 亜樹「…伸哉ってさー…大学、付属に行くの?」 伸哉「俺?んー・・・行かんかも。」 伸哉は、さらっと言ってのけた。 あたしは、驚きすぎて激しく動揺した。 亜樹「え…!」 伸哉「まー…亜樹にはまた後で話すよ。じゃ、部活行くわ。」 亜樹「え、ちょ…。」 それから、時間は容赦なく過ぎて、 8時を回ったころにはクラスの人たちがたくさん登校してきた。 そして、あたしが普段一緒にいる友達、立花優未。 優未「おーはよ!」 亜樹「…あ、おはよー。」 優未「…元気ないじゃん、何かあった?」 亜樹「んー…実は伸哉が…」 優未「楢崎?あいつと何かあったの?」 亜樹「や…あたしも詳しくはまだ聞いてないんだけど…」 優未「ほぅ。じゃ、亜樹の気持ちの整理ついたら話してくり!」 亜樹「え?」 優未「今はまだ、うまくまとまってないんでしょ?」 亜樹「…うん。」 優未「よっし!…あ、ところでさー、亜樹はもう進路決めた?」 あたしたちは仲は良かったけど、 3年生だからって常に進路の話題をするほど真面目なんかじゃなかった。 亜樹「あー・・・進路ね。あたしは付属の大学かな。優未は?」 優未「あたしも付属かなー。」 亜樹「学部とかって決めた?」 優未「家政学部服飾学科のデザイン専攻かなー。」 亜樹「あ、あたしも!専攻はファッションマネジメントだけど。」 優未「え!マネジメントにするの?」 亜樹「んー…いろいろ悩んだけど、そっちのがむいてるかなって。」 優未「でも、亜樹はデザインでも才能ありそうだけどなー。」 亜樹「いやいや。まぁ…でも入れたら、デザイン専攻の授業も取ろうかなって。」 優未「そっか。大学って結構、自由に授業取れるんだよね。」 亜樹「いいよねー。そういうの。」 あたしたちは2年生のときに、初めてクラスが一緒になって、 同じ夢を持つ同士で仲良くなった。 でもいつしか、お互いそんな夢を語ることはなくなっていて、 会えばくだらない話で笑いあう中だった。 今日1日は、優未のおかげで、何とか自分を保っていられた。 本当は今朝の伸哉の言葉が、心の奥に大きくひっかかっていた。 朝練から、帰ってきた伸哉にすぐ問い詰めれば良かったけど… でも、伸哉はあとであたしに話すって言ってくれた。 気になるけど、それはとても嬉しいことだし、 待ってみようと思う。 2.放課後、教室で 閉じる