晃人と川に行った日に言われたことが、

あたしの頭から離れなかった。


夏乃「はー…。」

千紗「え?!」

夏乃「ん?どしたの?」

千紗「いや!どしたの?は夏乃の方だよ!」

夏乃「へ?」

千紗「だって…夏乃がため息つくなんて…。」

夏乃「は?あたしだってため息ぐらい……!はー…もーいいや。」

千紗「あ、また!……何、何かあったの?」

夏乃「んー…。」


今日は午後からバイトなので、午前中は暇で、千紗の家に行き、部屋でごろごろしていた。


千紗「?」

夏乃「こないだ…さー、晃人と久々に楚辺川行ったのね。」

千紗「うわ。懐かしい〜。夏乃と晃人って言ったら楚辺川だもんね!」

夏乃「ははっ!うん。で、帰り際に急にマジメな話しちゃって。」

千紗「うん。」

夏乃「夏乃は夢とかないのかって聞かれちゃった。」

千紗「あっらら。…晃人はまた何で急に。」

夏乃「わかんない。でも何か引っかかっちゃって。」

千紗「地元のみんなや、親には結局最後まで言わなかったんだね?」

夏乃「ん?」

千紗「夢のために街の高校に進学したこと。」

夏乃「…うん。」


あたしの夢、それは自分で写真を撮って活用し、

写真素材で物を作ることだった。

こんな田舎町でそんな大きい夢持っても…って、

バカにされるのは何となくわかっていた。


だから黙っていた。


そのために、あたしはいくつか賞をとったことがある写真部がある街の高校へ進学した。

大体、こっちに住んでる人たちは街の高校へ進学をしても、

1番地元寄りの高校を選ぶのだが、

あたしは、「あっちのが制服が可愛いから」と、適当な理由をつけて

街の中でも遠めの高校を受験したのだった。


高校に入って、やる気を出して写真部に入部して、

あたしの大好きな風景を撮って、

先輩たちや先生から勧められたコンテストに応募して、

嬉しいことに、賞を取ることも何度かあって、

元カレや千紗、高校の友達が応援してくれたから調子に乗っちゃったのだと思う。



千紗「昨日、晃人には言っても良かったんじゃないの?」

夏乃「…言えないよ、今更。晃人には尚更ね…。」

千紗「何で?夏乃にとっては良きお兄ちゃんでしょ?」

夏乃「うん。…昔は、何かに悩んだら晃人に相談することが当たり前だったけどさ…。」

千紗「…。」

夏乃「弱音吐きたいときにそばにいなかったからかな?」

千紗「そばに?いつでも会える距離にいたよね?」

夏乃「…そばにいかなかった、が正解かな。」

千紗「…。」

夏乃「…元カレとダメになったのだって、あたしの弱さが原因だし。」

千紗「それは…それは、気にしなくて良いんじゃない?」

夏乃「え?」

千紗「…人なんて強くいられるときのが少ないと思うよ?」

夏乃「…そう?」

千紗「そうだよ。強がってたってどっかでボロが出る。」

夏乃「千紗…。」

千紗「それに、彼氏さんも分かってて別れてくれたんじゃない?」

夏乃「だったらいいけど。」

千紗「…もう1度頑張る気はないの?」


千紗がいきなり驚く言葉を言った。

あたしは何を突然言い出すのかと動揺するばかりだった。


夏乃「えぇ?何…彼氏?」

千紗「違う違う。夢。」

夏乃「あぁ…ないでしょ。」

千紗「何で?」

夏乃「あたしはもう…それに才能ないみたいだし?」


そう言って無理矢理笑った。


千紗「そんなありきたりなこと言わないでよ。」


千紗からの予想外な言葉にあたしはイラついた。


夏乃「あのね、ありきたりって……あたしはもう頑張って頑張って限界を知ったの!」

千紗「…ねぇ。」

夏乃「何!」

千紗「夏乃はあたしに隠し事ないの?」

夏乃「は?何いきなり…!」

千紗「ないの?」

夏乃「…ないと思うけど?」

千紗「本当に?」

夏乃「本当に。」

千紗「じゃあ聞いていい?」

夏乃「何を?」


あたしは、あたしなりに頑張って限界を知った。

もう…どうしようもないくらい頑張ったつもりだった。

そこで気付けた。


才能がないってことに。


千紗「何で彼氏と別れたの?」

夏乃「何でって…言ったことなかったっけ?」

千紗「ない。」

夏乃「いや…だからさっきも言ったけどあたしの弱さっていうか…。」

千紗「何で弱ってたの?」

夏乃「え…と、確か出版社主催の専属フォトグラファーコンテストの最終で落ちて…」

千紗「それ知らない。」

夏乃「え、嘘。」

千紗「そんなの受けてたの知らないよ?あたし。」

夏乃「え…えぇ?あれ?でも知ってるんだよね?」

千紗「知ってるけど。」

夏乃「…どういうこと?」

千紗「夏乃が出戻ってきたとき…明らかに変だったから…彼氏さんに聞いちゃったの。」

夏乃「あー…。そなんだ。」

千紗「でしゃばりすぎだってわかってたけど…」

夏乃「ううん。話さなかったあたしがいけないし。」


そういえば、コンテストの出場権をもらうために、高校の卒業前辺りから、

せめて名前覚えてもらえるように、出版社に毎週、写真を送りつけたりして、

必死になりすぎてて、何も周りが見えてなかったのかもな。


夢が叶いそうな一歩手前まで行って、

毎日がむしゃらに夢中で過ごしてたんだっけ。


あの頃は。


それでも飽きずに一緒にいてくれたんだよなぁ。


夢を失って荒れちゃったあたしを、支えるのに疲れたんじゃなくって、

離れた方がいいって理解してくれてたなんて、

知っただけで、


ただ、泣ける。


18歳のあたしには重かったことなのかも知れない。

いろんなものを一気に手に抱えられるほど器用なんかじゃなくて、

大切なものに順番なんかつけられなくって、

自分のことしか見えていなくって。

気がついたら何もなくなっていて。



あたしはどれだけの人に支えられて、

どれだけ自由に夢を見てたんだろう。


なのに、たった1回の挫折で、全て捨てて。



最悪だ。


千紗「結構前に、紹介されたときに彼氏さんの連絡先、聞いててさ。」

夏乃「……。」

千紗「夏乃?」

夏乃「え?!あ、あぁ。あいつ意外とちゃっかりしてるよね。」

千紗「ははっ。ちゃっかりって。ちょいちょい相談されたこともあったよ、実は。」

夏乃「そうなのー?うわー…。」

千紗「大丈夫!大したことじゃなかったからさ。」

夏乃「何何ー?」

千紗「指のサイズとか、ね。」

夏乃「指輪かー。そういやもらったなぁ。あれ、事前に千紗に聞いてたのか…。」

千紗「あたしと夏乃はサイズ一緒だからね。教えてあげた。」

夏乃「…指輪渡されたときさ、かなーりのどや顔だったんだよね。」

千紗「あはは。俺ってすごいだろーみたいな?」

夏乃「そうそう。本当のとこはアホだからね、あの人。」

千紗「アホなの?」

夏乃「アホだよ。だって千紗にサイズ聞いてたんでしょ?なのに間違えたんだから。」

千紗「え!間違えたの?」

夏乃「うん。15号買ってきたの。ぶっかぶかだった。」

千紗「15?あたしちゃんと9号って言ったけどなぁ。」

夏乃「どこで9が15になったんだか…。」

千紗「アホ、なのか…?」

夏乃「…いいやつすぎて…さ。」

千紗「うん?」

夏乃「いいやつすぎて…あたしにはもったいなかった。」

千紗「…。」

夏乃「あいつの3年間あたしなんかといて良かったのかなって思うぐらい。」

千紗「何言ってんの。良かったに決まってるじゃん。」

夏乃「…。」

千紗「きっと彼氏さんだって幸せだったよ。一緒に過ごした時間が無駄になることなんてない。」

夏乃「千紗…。」

千紗「ちゃんと2人の時間はお互いの糧になったと思うよ。」


夏乃「…あたしは応えなきゃいけないのかもな。」


千紗「え?」

夏乃「みんなの思いに。」

千紗「…どういう意味?」

夏乃「たった1回挫けたぐらいで…自分に負けて、みんなの思い踏みにじってたのかも。」

千紗「それって…」

夏乃「うん。」

千紗「本当に本気で?」

夏乃「…チャレンジだけしてみようかな。」


その言葉を発したと同時に千紗が立ち上がってあたしの手を握った。


夏乃「ちょ、千紗?何…」

千紗「…よかった。」


千紗は涙声であたしに言った。


夏乃「千紗…泣いて…る?」

千紗「…泣いてない!」

夏乃「…そっか。」


何で千紗が泣いているのかわからないほどバカじゃない。


あったかい。


こんなあたしを思って泣いてくれる人がいる。

なんて幸せなんだろう。


3年前、何でみんなの思いを苦痛と受け止めたんだろう。


調子に乗ったのは自分。

誰も悪くなんてなかったのに。

全力で支えてくれる人たちが、あたしの周りにはたくさんいたのに。


夏乃「さ!」


あたしは明るめの声を出した。


千紗「バイト?もうそんな時間?」

夏乃「ううん。その前にめぼしいコンテストにでも応募しようかなって。」

千紗「行動早!」

夏乃「…実を言うとさ、未練たっぷりだったんだ。」

千紗「そなの?」

夏乃「フォト雑誌、今も定期購読で街の本屋に行ってまで買ってるし。」

千紗「そうなの?!未練たらたらじゃん!」

夏乃「…えへ。」

千紗「〜…!もう…忘れたいことだと思ってて触れないように努力してたのに。」

夏乃「何よ。さっきは、ばっちり古傷えぐってきたくせに。」

千紗「だって…もう言わなきゃ気がすまなかったんだもん。」

夏乃「ありがとう。」

千紗「あたし…写真撮ってる夏乃が大好きなの。」

夏乃「知ってる。」


岳「…え。」


夏乃「?あれ?岳。いたの?」

岳「なななな!何問題発言してんだよ!」

夏乃「は?」

岳「しかも夏乃ちゃんも何受け入れてんの?」

夏乃「あたし?」

千紗「…岳、あんたどこから聞いてたの?」

岳「な、夏乃が大好きとか何とか。」

千紗「やっぱり…。前に言葉あるから。告白じゃないからね。」

夏乃「うん。別にそういうんじゃないよ?」


あたしは岳のありえない誤解っぷりに笑いが出た。


岳「笑うか?」

夏乃「笑うでしょ。」

岳「笑うか…。」

夏乃「笑うよ。」

千紗「てか、ないでしょ。少なくともあたしは、先週まで男の人と健全にお付き合いしてましたからー。」

岳「はっ。健全?」

千紗「そこ笑う?」

岳「健全に付き合うって小学生じゃあるまいし。」

夏乃「健全っていうより普通でしょ。」

千紗「うん、普通。」

岳「…」

千紗「あ、そんな気にしないでよ。もう別に…さ、しっかり話し合ったし。」

岳「けど。」

千紗「気ぃ使われるの嫌いなの。」

岳「知ってるよ。」

千紗「だったら。」

夏乃「岳なりに気にしてるんだよね?好きなのに別れた千紗をさ。」

岳「まぁ。」

千紗「…一方的に好きでもどうしようもないこと、岳にもいつかわかるよ。」

岳「十分、知ってるし。」

千紗「お?そなの?」

岳「…俺が何年想ってきたと…。」

千紗「へぇ?岳もそういう恋してるんだ?意外〜。」

夏乃「千紗。」

千紗「ん?」

夏乃「それ以上は…。」


あたしは、言葉に少し暴走を始めた千紗を止めようとした。

だけど、すぐ岳から制止が入った。


岳「いいよ、夏乃ちゃん。」

千紗「…何?」

岳「俺、千紗のこと好きだ。」

千紗「…は?何・・何の冗談?」

岳「冗談じゃねぇよ。」

千紗「だって…岳は弟みたいで…」

岳「千紗はずっとそう思ってたかも知れねぇけど、俺は恋愛対象で見てた。」

千紗「えと…ご、めん。…考えさせて。」

岳「へ。考えてくれんの?」

千紗「は…?」

岳「すぐ振られるかと思ってた。」

千紗「そんなことしないよ!」

岳「じゃあ、ゆっくり考えて。俺、1ヵ月ぐらいこっちにいるし。」

千紗「え、そなの?」

岳「うん。」


最初は冗談でしょ、みたいな顔をしていた千紗も、

岳の顔を見て、気持ちを真摯に受け取ったらしい。


夏乃「へへ。岳に千紗とられちゃうなぁ。」

岳「だ、だからそういう…あ!あぁ、ごめん。」


あたしは、岳がこれからは遠慮なしに、

千紗のところへ来るのに気付きそう言った。


千紗「何?」

岳「俺、遠慮しないから。」

千紗「ん?」

岳「覚悟しとけ。若さでユキ兄には勝ってやる!」

千紗「…わ、若さって。」


夏乃「…じゃ、あたしはそろそろ行くよ。」

千紗「え…あ、頑張ってね。…さっきのこと2度と忘れたりしないでよ?」

夏乃「ありがと。」


バイトの時間まであと1時間半。


チェック済みのコンテストへの応募の用意と、

出版社の編集部にも何枚か送りつけの再開を、と

考えながらあぜ道を抜け、公園を(…と言ってもただの草っ原だけど)抜け、

家までの道を歩いた。


外は、午後になるたびに暑さが増してきていた。

風なんてちっとも吹いていない。

熱い空気がまとわりつくように周りにあった。


セミがこれでもかってぐらいに一斉に鳴いている。

でもセミにとってはこれが仕事だと思う。

この夏。

短い命だって知りながらも頑張り続けてる。

長い時間があるだろうあたしが負けてなんかいられない。

…って、セミに対抗するのはおかしいけど…

ただ自分のモチベーションをあげるために思ったこと。


そんなとき、どこからか声が聞こえた。


幸弘「夏乃!」

夏乃「あれ?幸弘。どしたの?こんな時間に。」

幸弘「今日は写生大会。こいつらも一緒。」


そう言う、幸弘の後ろから、ちびっ子たちがひょこっと顔を出した。


夏乃「お。」

幸弘「じゃあ、ここで30分以内で書けよー。気分悪くなったやつはすぐ言うよーにー。」


話なんか聞かずに、すでに走っていった子どもたちに、幸弘は大きな声を掛けた。


夏乃「ははっ。幸弘が先生だー。」

幸弘「お前ね…先生ですよ。まだ2年目のペーペーだけど。」

夏乃「ここじゃ、2年やってればベテランでしょ。」

幸弘「…それもそーか。」

夏乃「そ。」


あたしたちは木陰のあるベンチに腰を掛けた。


幸弘「夏乃は今日は仕事は?」

夏乃「午後から。今は、千紗の家に行った帰りなの。」

幸弘「あー…。」


そう言いながら、幸弘はどこか遠くを見た。


あたしたち6人の中で、恋愛関係になったのはこの2人が初めてだった。

本当なら、うまくカップリングできそうなものだけど…

どうにも歳が離れてて、気付かないうちに、

お兄ちゃんやお姉ちゃん、もしくは弟、妹の枠にはまってることがある。

そうなると、どうも恋愛感情なんて、でにくいもので。


大抵は街へ出て行って、

街で出会った人が恋人になるか、結婚するかが

この町では普通のことだった。

もちろん、地元同士でくっついた人も数えるぐらいいるが、

それはどちらかというと、あたしたちの親世代が多かった。


幸弘「…もうさ、喋ってくんねーかと思った。」

夏乃「へ?何で?」

幸弘「だって夏乃は千紗と仲良いじゃん。」

夏乃「え?関係ないでしょ。2人が恋人同士じゃなくなったってあたしたちは友達じゃん。」

幸弘「…さんきゅ。」

夏乃「あたしは…別に幸弘をひどいとは思わないよ。」

幸弘「何で。最低だろ。」

夏乃「人の気持ちが変わるのは仕方ないことでしょ?」

幸弘「…。」

夏乃「それに、幸弘は努力したんだしさ。」

幸弘「けど、人傷つけたには変わんねぇし。」

夏乃「傷つけない恋愛なんてないでしょ。誰かがうまくいけば誰かが悲しむ。」

幸弘「…。」

夏乃「ね?」

幸弘「夏乃は相変わらず恋愛に関しては大人な発言するよなー。」

夏乃「そう?」

幸弘「どっちが年上だかわかんね。」

夏乃「はは。そんなことないよ。幸弘はちゃんとおにーさんだよ。」

幸弘「お兄さん?俺、夏乃に年上に見られた記憶ない気がするけど?」

夏乃「んー…晃人とは違う、おにーさん、かな。」

幸弘「晃人はみんなのアニキだもんな。」

夏乃「そ。頼りがいあるしねぇ。」

幸弘「俺と晃人って1歳しか変わんねぇのにすげぇ差だよな。」

夏乃「差っていうか…違う・・まったくの別者?」

幸弘「そりゃ、兄弟じゃないし、違うだろーけど。」

夏乃「そういうんじゃなくって…何だろね?うまく言えないけど。」

幸弘「ま、何となくわかるけどさ。不思議なもんで、ガキの頃から変わらないんだよなー。」

夏乃「うん。いくら歳とっても晃人は不動におにーさん。」

幸弘「…夏乃にとって本当にそうなわけ?」

夏乃「はい?」

幸弘「晃人だよ。本当に夏乃にとってアニキなの?あいつって。」

夏乃「そうだって言ってんじゃん。」

幸弘「へー。」

夏乃「何…?」

幸弘「かわいそ。」

夏乃「は?誰が。」

幸弘「晃人。」

夏乃「何でよ。あたしにおにーさんに思われちゃ可愛そうなわけ?」

幸弘「そーな。」

夏乃「あ、言っとくけど…何もないからね。」

幸弘「ん?」

夏乃「あたしと晃人の間に恋愛関係はナシ!晃人も思ってることだし。」

幸弘「あ、そーなの?」

夏乃「そ。だから余計な考えは無用!」


そう言って、あたしはベンチから立ち、背伸びをした。


幸弘「…誤解だと思うけど。」


夏乃「えー?何ー?聞こえなかったー。」

幸弘「何も言ってねーよ!」

夏乃「そー。」


結局、あたしはバイトまでに空いていた時間を幸弘と過ごしちゃったので、

バイトに行く時間ギリギリになってしまった。


夏乃「あ!やばっ!もうこんな時間…。」

幸弘「仕事だっけ。バスあんのか?」

夏乃「んー…多分、あと10分後ぐらいにあったよーな。」

幸弘「間に合う?」

夏乃「やー…微妙?」

幸弘「何時から?」

夏乃「え?あぁ…バイトは13時だよ。ただバスがないから早めに行ってるからさ。」

幸弘「次何時?」

夏乃「15時とか。」

幸弘「じゃあ…俺送るよ。」

夏乃「え?」

幸弘「いろいろ話聞いてもらって帰り際、引き止めたの俺だし。」

夏乃「いいよ、いいよ!そんなの。歩けるし!」

幸弘「でも歩いて行って遅刻したら金少なくなんだろ?」

夏乃「そーだけど…幸弘、仕事中じゃん。」

幸弘「あと、10分で写生時間も終わりだし、子どもたち学校戻したら次、昼休みだからさ。」

夏乃「…そう?」

幸弘「おう。」

夏乃「じゃあ…お言葉に甘えちゃおうかな…。」

幸弘「甘えとけー。」

夏乃「あ、あたしちょっと家に取りに行きたいものあるから取ってくる!」

幸弘「あぁ。つーか、俺、車で夏乃の家行くから待ってろよ。」

夏乃「…ありがと。」

幸弘「いーえ。」


あたしは家に帰り、封筒と写真のデータをバックの中に入れ、

応募する予定のコンテスト要綱と出版社の宛先を携帯のカメラで撮影した。


準備をバイト中にするつもりで。


お客さんなんて1時間に1人来るか来ないかで…暇だし。

もちろん、バイトの用意(エプロンぐらいだけど)も持って庭先で幸弘を待った。




4.夢の続き

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