あたしには大事なオルゴールがある


----------・・・・・・「Beautiful Dreamer」


あたしの大好きな曲。


あたしの家は幼い頃、離婚している。

でも悲しくなんかない。

そう言うと変だけど・・・

この曲があるからずっと父が、どこかで見守ってくれてるって思ってる。

いつだったかも覚えてないくらい昔

あたしの父はオルゴールを渡して去ってた。

母は「追いかけないで」って言った。だから、それに従った。

だって母は悲しい目つきで父を見ていたから・・・

それだけ記憶の片隅に残ってる。


あたし早良美夕、18歳、大学1年

今年、隣に住む相葉直樹と同じ大学に進学した。
あたしの母と直樹の母は高校時代の同級生らしい。

あたしも直樹とは母関係で知り合った。

直樹は今、20歳の2年生。あたしの1コ上。

何よりもあたしの事を考えてくれてとても大事な人。


「美夕!」

「・・・?直樹?」

「あのさ、前から聞こうって思ってたんだけどさお前、最近さ元気なくね?」

「・・え、んー・・・。」

「俺には何でも話せって。大丈夫だからさ。」

「・・・オルゴール。お父さんにもらった・・・アレ、鳴らなくなっちゃったの。」

「あ、凌さんの・・」


凌さんってのはあたしの父の名前。

直樹の母がそう呼ぶからうつったらしい


「やっぱ・・・いいや。直樹には関係ないもんね」

「あ、おい!何だそれ。俺は・・・いつだってお前の役立ってたいんだよ」

「・・・え?」

「あー・・・。わけわかんねぇ。ごめん。忘れて」

「・・・ヤダ。」
                     
「何が?」

「忘れない。ってこと。あたし直樹の一番になりたいもん。今の言葉、嬉しすぎだよ。」

「どーいう意味?」

「あたしは直樹が大切。ってか好き・・・です」

「どーも。美夕さもう少ししたら、誕生日じゃん? だから俺から言うつもりだったんだ」


泣きたい。泣きじゃくりたい。

あたしにとってこんなに嬉しいことはない。

直樹に隠し事がなくなったから・・・


「ほっほんとにー?」

「こんなことで、嘘なんか言わないって。」

「最高に嬉しい・・・」


それからあたし達は大学の講義を代返してもらって

オルゴールの裏に書いてあった製造工場へと足を運んだ。

けれど、そこへついたときの目の前にあった張り紙。


『閉鎖しました』


唖然としてしまった。父がくれた鳴らないオルゴール。

もう2度と聴けないと思うと悲しくて、無意識に涙がでてきていた。

そんな脆い弱いあたしを直樹はただただ何も言わず抱きしめてくれた。

その腕の中にどこかない心地良さを感じ黙っていた。


「君ら。何やってんだい?」


そう突然、60代くらいのおじさんに話かけられた。


「や、別に怪しくないっす。あのここの工場に…」

と直樹が話てる途中に急におじさんが、


「かなり前に閉鎖したよ。俺はここで働いてたんだ」

「あの!すみません。これ昔、父がくれたオルゴールなんです。
 大事な…直したりできませんか?」と美夕。

「ん?何の曲なんだ?」

「『フォスターのBeautiful Dreamer』ですけど・・・」

「あ?じゃあまさか君、みゆちゃんなのか?」

「え、何で名前知って・・・」

「知らねぇんか?みゆちゃんの親父さんはなウチ社長の
 親友なんだ。しょっちゅう遊びに顔だしててな。
 俺らの工場で作ったそのオルゴールは世界でひとつなんだ。
 特別オーダーでな。それでみゆちゃんの写真見せながら
 一人娘だって自慢してたんだ。」

「ウソ…。」


おじさんは閉鎖してからも時々、散歩で来てたらしい。


「どーれ。見てやろう。オーダーの受注を社長から受けて作ったのはほとんど俺なんだ。」

「見てやってください。お願いします。」と直樹


カチッカチャッ。ドライバーの音。

少しづつ分解されてく


「みゆちゃん、彼氏か?」

「え?はい。多分・・・」

「彼氏!多分だってよ?」とおじさん

「や、彼女っす。」と直樹。

「・・・」


そのオルゴールを直してくれたおじさんは内岡さんと言った。

1時間ぐらいだった。

簡単に直してくれた。さすが元プロ…

どうやらオルゴールの回る部分のネジが緩みサビと共に鈍ってたみたいだ。

なので曲自体は無事ということで直ったのだ。

内岡さんは今でもこの街に住み父とも元社長さんを含め会ってるらしい。

父も元気でやってることを聞いた。

・・・けれど会うつもりはなかった。

いつだって父を思い出せば

あのときの母の顔があたしの脳裏を横切る。

だから未練はない。元気でやってることを聞けた。

このオルゴールが直った。

それだけでもあたしはこれからも強く生きていける。

いろいろな人達に支えられながら・・・


「良かったな?」と直樹。

「うん、本当にいろいろありがとう」

「おー。」

「これからもよろしくね?」

「あー。もちろん。」

「うん。」


そうしてあたし達は帰り道を歩きだした。

そこには確かに見えてる幸せがある気がした…

そう遠くないあたしたちの未来。



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2004/01/31

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