あれから2週間が経った。

彼氏に振られた1日はすごく落ち込んでいたけど、

遼ちゃんに慰められて、那海にも慰められて、

バイト行って、大学行って、忙しさ任せもあるけど、

笑って過ごす毎日が増えていた。

そんな日々だったから、あたしは正直、落ち込める時間が少なかった。


莉乃「うぁー…終わったー。」

那海「疲れたね…。」

莉乃「ダメだ…あの先生の授業だけはきっつい。」

那海「ないよね…。帰る気しない。」

莉乃「次、この教室使わないかな?」

那海「もう4限だし大丈夫じゃん?」

莉乃「じゃあ…まだいよっか。」

那海「さーんせーい。」


《ブブブッ》


那海「莉乃、携帯鳴ってる。」

莉乃「あたしー?…はーい。もしもし」

遼『あ、莉乃?』

莉乃「あら、遼ちゃん。」

遼『あのさー…今、どこ?』

莉乃「大学だけど。」

遼『お、じゃあ出て来ねぇ?」

莉乃「?どこに?」

遼『門の前にいるからさ。』

莉乃「え?遼ちゃん、うちの大学にいるの?」

遼『そう。』

莉乃「な、何しに?」

遼『暇だったから…莉乃に会いに?』

莉乃「そ、そう…。今日、バイトはないの?」

遼『んー、休み。』

莉乃「じゃあ…今から行くね。」

遼『おー。待ってる。』


あたしは電話を切った。

強烈な授業を受けてグダグダしてたのに、

一気に疲れが飛んだ感じである。


那海「高瀬さん?」

莉乃「そー。何か来てるらしいよ。那海、ごめん。あたし行かなきゃ。」

那海「ん。あたしもとりあえず教室出るわ。」

莉乃「うん、行こ行こ。てか、那海も遼ちゃんに会う?」

那海「んー…じゃあ、会うだけね。」

莉乃「へ?」

那海「そのあとはおふたりでごゆっくり!邪魔になっちゃうしね。」

莉乃「何だそれ?」

那海「莉乃ちゃんの優しい友達が気を遣ってみました。」

莉乃「気を遣われる必要はないような…って、そういや、今日は彼氏は?」

那海「夜にバイトで会う予定ー。」

莉乃「そっか。」


教室から出て、門へと向かった。

あたしはどこに遼ちゃんがいるのかを探したら、

門の前で座り込んでタバコを吸っている男を見つけた。


莉乃「遼ちゃん!」

遼「おぅ。あれ?なっちゃん?」

那海「お久しぶりでーす。」

遼「おー!すげー久しぶりじゃんね!」

那海「お元気そうで!」

遼「もちろん。」

那海「それじゃ…あたしは早めにバイト行って彼氏に会うんで…じゃーね、莉乃に高瀬さん。」

莉乃「うーぃ。楽しんで働いてきちゃって!」

那海「ガッテン!」

遼「おー。…って、なっちゃん、もう行くんだ?」

莉乃「あー…あれで彼氏に会うの超楽しみにしてるからねぇ。」

遼「あれでって?」

莉乃「普段、クールな感じなんだけど彼氏ぞっこんなの。」

遼「へー。なっちゃんがねぇ。付き合いたて?」

莉乃「いんや。もう4年とかになるんじゃないかなぁ。高校時代からだし。」

遼「長っ!…いいっすねぇ。」

莉乃「遼ちゃんだって…あたしのとこなんか遊びに来てないで彼女作ればいいじゃん。」

遼「ん?あぁ…」

莉乃「…って今、いないんだよね?知らないけど…」

遼「いねぇよ。」

莉乃「…そ。」


会話が微妙な空気で終わったあと、遼ちゃんが「どこ行く?」って聞いてきて、

あたしも特に行きたい場所がなかったので悩んでいたら、

遼ちゃんは黙って歩いて行って更に微妙な空気になっていた。



那海の前であたしと遼ちゃんの間で恋愛なんてないって言ったけど…

本当は、

本当は、遼ちゃんのことを好きな時期もあった。


14歳。

恋に憧れちゃう時期。

遼ちゃんは2コ上だから、あたしが14歳のときに、16歳。

高校に入って制服を着てる遼ちゃんが急にかっこよく見えた。

中学のときは何も思わないただの近所のお兄ちゃんって感じだったのにな。

不思議なもので。


これがあたしの初恋だったんだと思う。


ある日、遼ちゃんが女の子と歩いてるのを街で見かけて、

それから、あたしは遼ちゃんのことを恋愛対象として見なくなった。

…というか、遼ちゃんから見たらあたしなんてガキで、恋愛対象になるはずなんかないんだろうけども。

今思えば、遼ちゃんの隣を歩いていた女の子はただのクラスメートとか

女友達だったのかも知れない。

彼女じゃなかったのかも知れない。

でもそんなことも理解できなかった若い頃。


遼「…の、莉乃!」

莉乃「へ?」

遼「座れば?」

莉乃「あ…あぁ…うん。ありがと。」


あたしたちは、公園に来ていた。

あの日、あたしが泣いていたあの公園に。

…って、いつの間に歩いてここまで来てたんだ?

考え事してるって恐ろしい…。


遼「声聞こえてた?」

莉乃「ん……?あー…ちょっと考え事してて…ごめんね。」

遼「別にいっけどさ。何…元カレのことでも考えてた?」

莉乃「え?違う違う!ないない。」

遼「…ふーん。」

莉乃「遼ちゃん?…どしたの?何か変…。」

遼「別に。」

莉乃「何かあったの?だから今日来たの?」

遼「…」

莉乃「ねぇ、遼ちゃんって。…あたし、いっぱい迷惑掛けたしできるなら力になりたい。」

遼「力…ね。」

莉乃「あ、今バカにしたでしょ!あたしだってね、悩み相談ぐら…え?」


そのとき、遼ちゃんの顔が近づいてきた。


莉乃「…からかわないでよね!本気で言ってるのに…てか、もう照れたりしないし。」

遼「…はー…。少しは警戒すりゃいいのに。」

莉乃「え…?」


そして、遼ちゃんはあたしにキスをした。


あまりにも突然のことで、あたしの思考回路は止まった。


遼「いつまでもからかったりしねぇよ。」

莉乃「え…何?」

遼「…あれ、意外と冷静?」

莉乃「あ、いや…ど、動揺してますよ?!」

遼「…そう。」

莉乃「だから…何で?」

遼「わかろうよ。つーか、わかろうとしてよ。」

莉乃「…遼ちゃん、あたしのこと好きなの?」

遼「それ以外にないっしょ。」

莉乃「…ついこないだまで対象外とか言ってたくせに。」

遼「完全に嘘だな。」

莉乃「信じてたのに。」

遼「…俺、わりと前から好きだったんだ。だから、あの日偶然、
  公園で見かけて、彼氏と別れたって聞いてチャンスだって思った。」

莉乃「前って…」

遼「彼氏ができたって聞いてからは莉乃にあんま会わないようにしてたからさ。」

莉乃「え?だって…別にあいつが初めての彼氏ってわけじゃないよ?」

遼「あぁ。…しょうがねぇじゃん。好きになったから彼氏の存在とか気になったっつーか。」

莉乃「あー…そっか。」

遼「…さっきはごめん。いきなり。」

莉乃「んーん。油断してたあたしが悪い。…ねぇ、遼ちゃん。」

遼「ん?」

莉乃「初めて彼女できたのいつ?」

遼「は?」

莉乃「教えてよ〜!」

遼「え、えー…っと確か17歳の秋ぐらい。修学旅行行く前だったよーな。」

莉乃「17か…。ってことは…やっぱあの人は友達だったのか。」

遼「何?」

莉乃「んー?ね。」

遼「じゃあ…莉乃はいつなんだよ!」

莉乃「あたし?15歳のときだったかな。」

遼「早っ!」

莉乃「遼ちゃんの頃とは時代が違うからさー。」

遼「あ?」

莉乃「あはは。冗談だって。」

遼「…ったく。」

莉乃「あたしさー…初恋が遼ちゃんだったんだよねぇ。」

遼「…マジ?」

莉乃「おっそい初恋でさ…あたしが14歳の頃にさ、遼ちゃんが女の子と
   歩いてるの見た瞬間に諦めちゃったんだけどね。」

遼「んな、歩いてたぐらいで?」

莉乃「うん。」

遼「…全然記憶ないけど…あ!そっか。年齢的にそのときの女は彼女じゃなかったってことか。」

莉乃「そ。それを今頃、確認してみたの。…遼ちゃん。ごめんね。」

遼「…」

莉乃「あたし、今は遼ちゃんの気持ちに全力では応えられないや。」

遼「……わかった。」

莉乃「当分、恋愛する気もなくって。」

遼「あぁ。」

莉乃「…でも、あたし遼ちゃんのこと大好き。」

遼「あぁ。…あ?」

莉乃「その気持ちはいつかは恋愛感情に変わるかも知れない。それでもいいかな?」

遼「え!お、俺振られてねぇの?」

莉乃「…微妙?」

遼「…っし。絶対、恋愛感情で好きにさせてやる!」

莉乃「…ん。」


恋をすることに不安があるあたしは、

真っ直ぐな遼ちゃんに中途半端な気持ちで向き合うのは卑怯な気がする。

微妙な答えを出して、曖昧にしてる今はよくないのかも知れないけど…

それなりに、それなりに、ちゃんと自分の中で気持ちに整理がついたら、

ちゃんと言葉にして伝えようと思う。

こんなあたしを想ってくれる遼ちゃんに全力で。


恋なんてもうしたくなかった。

何年もかけて積み重ねた信頼もあっさりと失くなってしまうような

そんなものを生む恋なんてもういらなかった。









*










----------3ヵ月後。


今日は、遼ちゃんの24回目の誕生日。

遼ちゃんに告白されてから、3ヵ月が経ち、あたしたちは変わらず過ごしてきた。

まだ、付き合ってはいない。


でも、この過ごしてきた時間の中で、

あたしは確かな気持ちを見つけて、

ちゃんと遼ちゃんに向き合えるって思えた。

だから、今日。

今日の遼ちゃんの誕生日に想いを伝えようと思う。


前に遼ちゃんに会ったのは、2週間前。

今日までにも2回ぐらいご飯に誘われたりしたけど…適当な理由をつけて断った。

悪いと思ったけど、全ては今日のため。

誕生日を盛大にお祝いしたいから、

あたしが今、できる限りのことをしてあげたいから、

ひっそりと準備をした。

プレゼントは前に一緒に出掛けたときに欲しがっていた腕時計を買った。

そして、今から電話を掛ける。


莉乃「うー…やっぱ今日の予定聞いとけばよかったかなぁ。」


あたしは独り言をつぶやいた。

けど、考えてもキリがないので、

あたしはメモリーから「高瀬 遼」を呼び出し、電話を掛けた。


莉乃「あ、遼ちゃん?」

遼『んぁー…おはよ。』
 
莉乃「…ひょっとして寝てた?」

遼『んー…昨日、朝方までバイトだったからさ。」

莉乃「そっか。ごめんね、起こしちゃって。」

遼『や、平気。もう14時だし。』

莉乃「ん、ねぇ今日暇?」

遼『…まぁ。』

莉乃「そいじゃさ…遼ちゃん家行っていい?」

遼『…いいけど。どうかした?』

莉乃「んーん。今日はバイトもないしね。」

遼『そっか。じゃあ待ってる。』

莉乃「うん、あとでね。」


あたしは、とりあえず遼ちゃんと会う約束をした。


《ピンポーン》


遼「いらっさい。」

莉乃「お邪魔〜。」


あたしはソファに座った。


遼「何か久しぶりだな。」

莉乃「そだねぇー。」

遼「…莉乃。あのさ…俺、今日…」

莉乃「遼ちゃん。はっぴばーすでー。」

遼「…知ってたんだ。」

莉乃「毎年、ちゃんと密かに祝ってたよ?」

遼「ありがと。」

莉乃「忘れられなかったなぁ、遼ちゃんの誕生日って。」

遼「俺、そんな特殊は日に生まれた覚えは…」

莉乃「そういうんじゃなくってさ…何となく?」

遼「へぇ。」

莉乃「それでね…遼ちゃん。」

遼「ん?」

莉乃「…もし、遼ちゃんがまだあたしのこと好きなら…彼女にしてくれないかな?」

遼「へ。あ、うん。え?」

莉乃「…ちゃんと聞いてた?あたし告白したんだけど…。」

遼「あぁ。…もうだめだと思ってた。」

莉乃「え?」

遼「最近、誘っても断られてたし、無理になったのかって思ってた。」

莉乃「ごめんね。気持ちの整理したかったの。」

遼「…俺、こんなだけどさ…でも莉乃を大切にしたい。」

莉乃「こんなとか言わないでよ。そんな遼ちゃんをあたしは好きなんだから。」

遼「…サンキュ。」


遼ちゃんは、あたしを抱きしめてくれた。

想いを伝えてくれてからの今まで、遼ちゃんは1度も手を出してこなかった。

この3ヵ月は本当に純粋に過ごしてきた。


遼ちゃんとなら、

遼ちゃんとなら、うまくやっていけるって思えた。


莉乃「…プレゼント、あるからね?」

遼「もう…十分。何もいらねぇよ。」

莉乃「本当?こないだ欲しがってた腕時計だよ?」

遼「…やっぱり欲しいです。」

莉乃「へへ。やったね。」


笑ったあたしに遼ちゃんはキスをくれた。


遼「幼なじみから彼女になったんだからさ…俺のこと"ちゃん"付けで呼ぶのはやめない?」

莉乃「いいよ。…遼。」



幼なじみから恋愛関係になった今日はあたしたちの記念日。


そして、今日は遼ちゃんが産まれた日。



そんな素敵な日。


------------end-------------- 
2008/04/02



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