菜月「っひゃー!」

有弓「うーみーぃ。」

菜月「今の季節って初めて来たー!!!いいねっ!爽やか〜!」

有弓「わかるー!暑くなく寒くなく過ごしやすいね!」


GW明けの海は笑えるぐらい人がいない。

きっと、GW中は人しかいなかっただろうに。

まだ泳ぐには早いけど…波打ち際ではしゃげる

この季節の海があたしも有弓も1番好きだ。


菜月「あー…楽しすぎるっ!」

邦「女子陣はしゃいどるなー。」

有弓「だって…楽しいもん。ねぇ、邦あっち行こ!」

邦「お?ええけど…有弓ってはしゃぐタイプやったんやなぁ。」

有弓「今、テンション上がらないでいつ上がるのさー!」

邦「わ、わからん…。ほな、菜月ちゃんも行こかー?」

菜月「あー。あたしはいいよ。行っといでー。」


そう言って、有弓は邦を連れてどこかへ行ったから、あたしは1人になった。

もともと、どっちかっていうと、1人でいることが好きなあたしは、

ぼけーっと考え事をしていた。

少しして、将貴に声を掛けられた。


将貴「あれ?菜月1人?」

菜月「うん。」


車を海から少し遠い駐車場に置きに行った将貴が合流した。


将貴「何ハブられてんの。」

菜月「違うしー。気ぃ遣ってあげたんだもん。」

将貴「え。そういう関係なの?あいつら。」

菜月「…さぁ?」

将貴「ま、ないか。」

菜月「え?何で?」

将貴「あいつ彼女作る気とかねぇんじゃないかと思ってっからさ。」

菜月「そうなの?」


あたしはそう言って将貴の腕を掴んだ。


将貴「な…!どうしたんだよ。」

菜月「あ。いやっ…別に。」

将貴「何か隠してんだろー。やたら真剣だったし。」

菜月「全然!何も?」

将貴「お前…わかりやすいのな。」


そう言って、将貴はあたしの頭を軽く叩いた。


菜月「そんなことないもん。」

将貴「…あいつ、元カノのことでいろいろあったからさ…。」

菜月「あ、そうなんだ…。」

将貴「邦って少し軽いじゃん?」

菜月「ん…まぁ。」

将貴「半年くらい前まではそんなやつじゃなかったんだよ。」

菜月「え、そうなの?」

将貴「好きなやつに一途でさ。」

菜月「軽くなったのが元カノが原因ってこと?」

将貴「多分だけどな。」

菜月「そうなんだー…。」


話が終わってから少しの間、沈黙が続いた。

潮風が気持ちよくて、遠くから聞こえてくる波の音が、

どこか落ち着かせてくれた。


菜月「ねぇ、将貴は好きな人いないの?」

将貴「俺?い…ないんじゃん?」

菜月「何で疑問系?」

将貴「…好きになっちゃいけない人を多分好きだから。」

菜月「へ?じゃあ…好きな人いるんじゃん。」

将貴「…」

菜月「黙っちゃったよ…。」

将貴「…います。」

菜月「ねぇ、好きになっちゃいけない人なんているの?」

将貴「そりゃいるだろ。」

菜月「あたしにはわからないなぁ。」

将貴「何が?」

菜月「あたしは好きなら好きだから。その人に彼氏がいても結婚してても何でもさ。」

将貴「…強ぇな。」

菜月「そう?それだけ好きってことかな。」

将貴「じゃ、俺もそう思うようにすっかな。」

菜月「へ?」

将貴「菜月が好きなやつにそう思えるってことは、もし自分がそう思われたら、何かしら応えてくれるってことだろ?」

菜月「そうだね。ちゃんと気持ち伝えてくれた人のこと悪く思えないし。」

将貴「いいやつだな。」

菜月「そうかなぁ?」


有弓「菜月ー!!!貝!ピンクの貝だよー。」

菜月「ん?あー!桜貝だ!」


いつの間にか真剣に恋の話をしていたけど、

大体、話が終わったところで有弓に声を掛けられた。


菜月「どこで見つけたの?」

有弓「邦と一緒にあの岩の下で見つけたー。」

菜月「じゃ、あたしにも案内してよ。」

有弓「いいよ、いいよ!行こう!」

菜月「ちょっと行ってくるねー。」


将貴「おぅ。行ってらー。」


あたしは有弓と一緒に桜貝を見つけた場所に案内してもらった。













*














菜月と有弓が、岩の下に行った頃、将貴と邦が2人で話していた。



邦「ひー。裾がやべぇ。」

将貴「そんなに濡れるほど、どこまで行ってたんだよ。」

邦「あの岩の下のとこ結構、波来ててよー…」

将貴「あー。」

邦「たまには海もいいもんやな。」

将貴「邦、海で良かったわけ?」

邦「ん?あぁ…もう別に平気やで。」

将貴「そっか。」

邦「それに俺…実は有弓のおかげで大分吹っ切れてたりすんやわ。」

将貴「へぇ?けど、お前ら親しくなったの今日って感じじゃね?」

邦「まぁ、名前で呼んだのとか、有弓のこと深く知れたのは今日なんやけどな。」

将貴「何かあんの?」

邦「俺、元カノに振られて、すぐその日ヘルプでバイト入ってさ。」

将貴「あぁ。」

邦「そんときに会ったのが有弓やったんよ。」

将貴「そういうことか。…ってじゃあ、まさかお前…。」

邦「ん?」

将貴「有弓ちゃんのこと好きなんか?」

邦「まだわからへんけど…好きになっとるんかも。」

将貴「マジかよ…。」

邦「え。まさか、将貴も好きだったりすんねんか?」

将貴「それはない!つーか、今日会ったばっかだから!」

邦「ビックリしたー!驚かさんといてよー。」

将貴「それに好きとか言うなら俺は菜月。」

邦「うぉ!ほんまに?そっかそかー!いい子やもんなー。」

将貴「ま…俺の話はいいんだけど、さっき、菜月に邦は彼女作る気ないかもって言っちゃったからさ。」

邦「あぁ…。何や。別に菜月ちゃんなら問題ないやん。」

将貴「いや、十中八九、菜月の口から有弓に伝わるだろ。」

邦「あー…でも俺が勝手に好きなんやし平気やろ。将貴が気にすることないで。」

将貴「悪かったな。」

邦「平気やって。…さ、あいつらのとこ行くか。そろそろ日も傾いてきよったし。」











*











菜月「可愛いねー!」

有弓「ねねね!ストラップとかにできないかなぁ。」

菜月「キリみたいので穴とか開ければできるんじゃない?」

有弓「そっかな?やってみよー。」

菜月「そういえば、桜貝ってさ、恋が実るみたいのなかったっけ?」

有弓「あー…聞いたことあるかも。」

菜月「うろ覚えだけど何かあったよねー。」

有弓「可愛いよねぇ、そういうの。」

菜月「うんうん!純粋な感じが…。」

有弓「菜月は乙女じゃないからねぇー。」

菜月「引きずるね、その話。」

有弓「あはは!なんちゃって!あたしも菜月も十分、乙女さぁ!」

菜月「そう言われると否定したくなるよね。」

有弓「てか、恥ずかしいよね、乙女とかいう言葉そのものがさ。」

菜月「最初に言い出したの有弓じゃん。」

有弓「そうでした…。あ!乙女っていえばさ…」

菜月「んー?」

有弓「菜月のことでいろいろあったから言うの忘れてたんだけどさ…」

菜月「うん。」

有弓「あたし、ヒデ先輩に告白されたんだ。」

菜月「えぇ!?」

有弓「両思いってやつだったんだよ、きっと。」

菜月「そっかー…。でもまぁ…ねぇ?仕方ないよね。」

有弓「うん。あとでちゃんと断わ…あ!」

菜月「え?」


ふと後ろを見た、有弓が急に言葉を止めた。


菜月「あれ。いたんだ?」

将貴「わり。聞くつもりじゃなかったんだけどさ。」

菜月「大丈夫だよ、ねぇ?有弓。」

有弓「うん。平気平気。」

将貴「サンキュー。…あれ?邦?」

有弓「え!邦もいたの?」

将貴「あぁ…一緒に来たんだけど…?」

邦「わりーわりー!せっかく乾かしたんに、また裾が濡れそうになったから浜で折ってたんや。」

有弓「邦…何か聞こえた?」

邦「何が?何や、いけない話でもしとったんかいな。」

有弓「違うし!」

邦「否定すると余計に怪しいって知っとるか?」

有弓「アホ邦!」

邦「な!失礼なやっちゃなー!」


それから、砂浜に戻って夕日を見て、沈んでから、

みんなで車に乗り込んで、地元へと戻った。

あたしと有弓は大学の最寄駅まででいいと言ったけど…

将貴が1人1人家まで送ってくれることになった。

有弓、邦、あたしの順番で近い人から順番に降りて行った。


菜月「ほいじゃ、わざわざ家までありがとねー。」

将貴「1丁目…ここ住んでんだ。」

菜月「うん、そー。5階だから眺めいいよー。」

将貴「マンションいいよなー。あ、俺、実家が5丁目なんだよ。」

菜月「そ…う。」


将貴が実家は5丁目だと言ってきたときは驚いた。

だって、話の流れ的にあたしも言わなくちゃならないかもだし。

あたしの実家があるのは、7丁目。

将貴の実家とあたしの実家の学校区が一緒とわかったら、

中学校時代の同級生だってことが今、ばれちゃうかも知れないからだ。


将貴「今は実家出たから、3丁目だけど。」

菜月「へぇ。近いね。」

将貴「またみんなで遊ぼうなー。」

菜月「うん、連絡するねー。それと今日はありがとね、超楽しかった!」

将貴「いやいや。邦にメールしてやって。あいつが企画者だし。」

菜月「了解っ!将貴も運転と、あと送ってくれてありがとね。」

将貴「おぅ。」

菜月「じゃあ…またね。」

将貴「じゃーなー。」


あたしは、将貴の車が角を曲がるまで見送った。

家に入ってから少しして、邦にメールをして、

明日の準備をしながら、夜は更けていった。



いくら恋愛したって、

あたしなんて、って思ってた。

だって、実際そうだったから。

だから、本気になるだけ無駄だってどこかで思ってた。


4.行方 ━all━

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